かねてから、花月の解説で、「足運び」について述べてきたのであるが、この「足運び」は、長い経験で、先人の故業躰の山藤宗山、木村宗博、川島宗敏氏らの指導で習得したことを元にして述べてきたものである。 数十年前になるが、名古屋の法輪寺の講習会で、四畳半花月をすることになっていた時、先にに雑誌「淡交」で発表された中で、四畳半花月の「足運び」で、座替わりの後、仕舞花が席に戻る時左足で縁を越えて自席に戻ると記され、山藤宗山がそれは間違っていると主張し、他の業躰達に反論したが、多勢に押し切られて、納得のしないままであった。 「淡交」に載ってしまうと一般にはそのように解釈されてしまって、山藤宗山は、困惑の中にあった。講習会の当日、山藤宗山は、突然、課目を変更し、平花月をすることになった。個人的に山藤宗山と懇意にしていたので、今でもその時のことが心に残る。 その後、雑誌「淡交」のように、最後の仕舞花は自席へ左足で戻るという方式で、現在まで至っている。「雪月花」も同じように最後の仕舞花は、そのように記載され、現在はそのように行われている。 その後の七事式の「足運び」は業躰によっていろいろ異なり、それを習う一般の人は、左右され、行躰の顔を見て、「足運び」を変え、時の流れの中で、変遷し、現在でも、基本的な「足運び」問題がないにしても、あまりこだわらない「足運び」では業躰によって、異なった「足運び」が多い。 今、思えば、「足運び」問題の起きた四畳半花月の際、て定的に干渉と研究をすべきであった。 これらの問題を残したことの原因は、七事式が多くあり、手順、所作などの重きを置いて指導され、「足運び」の詳細については、基本以外の「足運ぶ」は検証される機会が失われていたことによる。 これらの諸問題を解決し、山藤宗山の反対した意味を検証し、解決するために、七事式の「足運び」を含めて茶事の「足運び」も茶の論理として解明し、記述してみることにする。同意をされる方は、この論理で、「七事式」、「茶事」の足運びを実践されることを願う。 > ● 茶事の足運び
席中での足運びは、客は自由であるというものの、日本文化の伝統的慣習上から言えば、上座へ上る場合は右足で畳縁を越え、下がる場合は、左足で畳縁を越えるのが、基本である。流派の中には、右足、左足の解釈のとらえ方によって異なるものが僅かではあるが、日本文化の伝統的慣習で言えば、上り、・・・・ ・・・が基本である。 席中での足運びは、自分がいる位置と向かう位置、位置がなす意味合いによる相対的関係で上座、下座が決まる。例えば、床に向かう場合は上座へ進むことになり、又、・・・ ・・・へ進む場合に、上座、下座が決まり、それによって右足が優先に進み畳縁を越える足が決まる。しかしながら、席中の畳縁によっては、上りが・・・ ・・・時、畳縁を越える足は、右足で越える場合、左足で越える場合の畳縁があることを理解していなければならない。難しいようで簡単である。 席中の畳の縁で意識していなければならない畳縁と足運びの上り、下りを事例として図解して明示してみよう。
1図 席中の足運び 赤線を越える時は上りは・・・で越え、下がる時・・で越える。 緑線を越える時は、最初の席入りは・・足で入るが、席から上座へは ・・で越え、下座へは・・で越える。自席へ戻る時も・・ 足で入る。
以上の規矩によって足運びは成り立っているので、認識されるとよい。 A 客側の足運び 客は、本来、亭主側に迎合することもなく、自由な所作で席中に入り、足運びも自由であるというものの、茶席のたしなみを持していてこそ、茶席での一座建立としてのマナーが活用されるこ・・。。・・・的には上座へ上る際は、右足で立ち、左足を進め、畳縁を越える際は、下がる歩きは左足で縁を越え、上り際の畳縁は右足で越えて進む。その際、自分の位置する位置と進むべき方向の相対的位置関係で、・・・、下座が決まる。 「その一例」
茶事の場合の初座で、釜、道具を見て、仮座に坐し、末客が見終えて立った後、自席に着く正客の足運びの例
図3 「1」〜「22」まで、「5」,「6」は床前で坐した時、 「19」,「20」は釜の拝見で坐した時、「21」,「22」は釜 の拝見の後、にじった位置で道具を拝見している時。
図3 「1」〜「20」までのうち、「1」は道具を見て下がるため に左足を少し前に出して立った時、「9」,「10」は、連客 から末客まで、床前から道具を見るために、仮座に坐して待 機した時。「19」,「20」は正客が自席に着座した時。
茶事の場合の後座で、道具、釜を見て、仮座に坐し、末客が見終えて立った後、自席に着く正客の足運びの例
図4 「1」〜「22」まで、「5」,「6」は床前で坐した時、 「19」,「20」は道具の拝見で坐した時、「21」,「22」は 道具の拝見の後、にじった位置で釜を拝見している時。 ※ 後座は、初座に釜から拝見しているので、道具を先に見 てから釜を拝見する。
図5 「1」〜「20」までのうち、「1」は釜具を見て下がるため に左足を少し前に出して立った時、「9」,「10」は、連客 から末客まで、床前から道具を見るために、仮座に坐して待 機した時。「19」,「20」は正客が自席に着座した時。
茶事の席入りも退席も上記のようにされれば問題はない。大寄せの場合の広間では、七事式の八畳の足運びの基本を習得されればよい。 ● 七事式(四畳半、八畳)の足運び
七事式の足運びにも、先輩の先生の経験から、「席入りは右で入り、出る時は左で出る。、仕事をしに行く時は右で出て、左で席に入る、行く方の足で立ち、行く方の足で進む」と言うような曖昧な指導の中で、多くの指導者は教え、詳しくその理由は言わないで、パワハラ的に「そのように覚えなさい」という形式の指導が多い。しかしながら、七事式の足運びにも原理と約束がある。 〇 七事式八畳の畳縁を越える時の約束足運び 七事式で、八畳に席中へ入る時の足運びは次の図である。
1図 七事式八畳の席入り足運び 身体が前を向いて、赤線を越える時は上りは右足で越え、下がる時は左足で越える。身体が後ろ向きで下がる場合は、右足 で後ろ向きに下がる。 緑線を越える時は、最初の席入りは右足で入るが、席から上座へは右足で越え、下座へは左足で越える。自席へ戻る時も左 足で入る。
亭主の迎え付きの足運びは、曲がり茶道口では4歩で坐し、正面茶道口では3歩で坐した迎える。 七事式を終え、亭主の送り礼の後、席を退出する時の足運びは次の図である
図 身体が前を向いて、赤線を越える時は上りは右足で越え、下がる時は左足で越える。身体が後ろ向きで下がる場合は、右足 で後ろ向きに下がる。 緑線を越える時は、最初の席入りは右足で入るが、席から上座へは右足で越え、下座へは左足で越える。自席へ戻る時も左 足で入る。
亭主の送り礼の足運びは、曲がり茶道口では4歩で坐し、正面茶道口では3歩で坐した迎える。 〇 七事式の八畳で点前席へ行く場合、点前席から自席へ戻る足運び
点前席へ行く場合は、四客までは、前立なので、右足で立ち、左足 を畳縁すれすれまで進め、畳縁を右足で越える。 但し、「東」の位置にいる人は、八畳の通い畳に坐してため、前立 ではないから左足で立って、畳縁を左足で越え、踏込み畳から畳縁 を右足で越えて進む。
・・・ 自席へは左足で畳縁を越え、四歩で自席 に坐す。 但し、「東」の位置に・・・ 足で畳縁を越えて下がり、踏込み 畳から先は畳縁を右足で越えて進み、右足で元の席に入り、四歩で 坐す。
〇 七事式の且座、仙遊で炭手前をした後の足運び
三客が炭の役なので、「東」の「お炭を」の言葉で、右足で立ち、 左足を畳縁すれすれま/・・・ ・・足、左足の三歩進み、畳縁を右足 で越えて坐し、道具を持って、右足で立ち、左足を進め、畳縁を右 で越えて点前席に坐す。
炭を終えた後、勝手側へ一膝割り、左足で立ち、左足を後ろに引 き、右足を畳縁すれすれまで進め(体は下座を向く)、左足で畳縁 を越え、右足を左足前にか・・・ ・・・)を下げ、右足(11)を揃え、左足(12)を右斜め前へ進め、右足(13)で敷き合 わせ角を越えて、自席へは左足(18)で入り四歩で坐す。
〇 平花月において、点前座、客座からの仮座へ、仮座から点前座、客座への足運び
自席から点前座へ進む時は、左足(1)で立って、後ろを向いたま ま、左足を(2)へ下げ、右足を(3)へ下げ、左足を(4)へ下 げ、右足を・・・ ・・めて(体は下座向きとなる)、左足で畳縁 を越え、踏込み畳は、左、右、左の三歩で歩き、右足で縁を越え、 左足を仮座の縁前まで進め右足で畳縁を越えて入り、坐す。
仮座から点前座へは、仮座を出るには、赤線の敷き合わせを後ろ向 いて下がる時は、右足で下がらなければならない。 まず右足で立って後ろ向:::・・・ まで後ろに下げる。右足を(4)の 踏込み畳縁すれすれまでの位置へ進め(体は下座を向く)、左足で 畳縁を越え、踏込み畳を左、右、左の三歩で歩き、右足で畳縁延長 線を越えた(8)の位置まで進めて、点前席まで進む。
〇 平花月において、総礼で座替わりの際の足運び足運び
Aの人がDの自席へ帰り、Dの人がAの自席へ帰る際の足運び、 又、Aの位置の人が亭主の場合で仮座(緑色の8〜16)へ入り、D の位置の人がAの自席へ帰る足運び(茶色の1〜8)で「二上がり 三下がり」で左側通行。 座替わり後、点前座の仕舞花は、空いたCの自席へ帰る。仮座の亭 主///・・・え、敷き合わせを越えないで斜め上座からCの人が立った後の 空いた自席へ左足で入り坐す。Cの人も総礼後、自席のAの位置へ 右足で立ち、斜め上座へ同じ右足を下げ、左足を右足の前の上座(敷き合わせの前の位置)へ進め、右足で畳縁を越え、Aの人が立っ た後の空いた自席へ右足で入り坐す(茶色の1〜6)。 又、Aの位置の人が亭主の場合で仮座へ入る場合(緑色の8〜16) の足運び。・・・った後、右足で立ち、仮座を後ろ向きで右 足で出て、敷き合わせを左足で越え、踏込み畳を過ぎる時は右足で 畳縁を越え、坐して、建水を持って水屋へ下がる。
Aの位置の人とBの位置の人が互いに自席へ戻る際の足運びで、左 側通行(二上がり三下がり)下がる場合(1〜9)は左足 で立ち左足で自席へ入り坐す。 上る場合は右足で・・・左足で立ち、敷き合わせ下座へ斜めに 左足を下げ、右足を下げ(三下がり)、右足を左足前下座へ進め、 左足で畳縁を越え、仮座へは右足で入り坐す(緑色の1〜12)。 座替わり後、点前・・・左足で越え、踏込み畳を過ぎる時は右足で 畳縁を越え、坐して、建水を持って水屋へ下がる。
「七事式の足運び」は、これ以降は、HPの「各服点七事式」へ転載されますので、そちらの方をご覧ください。